代表理事挨拶
黒田 泰弘
(香川大学医学部救急災害医学)
日本脳死・脳蘇生学会は、1980年代後半に日本救急医学会に組織された脳蘇生や脳死の病態について議論する専門委員会をその起源としています。その当時は、本邦において脳死下臓器提供の是非が盛んに議論されており、厚生省(当時)脳死判定基準(いわゆる竹内基準)が公表され、「臨時脳死及び臓器移植調査会、いわゆる脳死臨調」の議論が社会の注目を集めていました。このようななか、1988年に第1回日本脳死・脳蘇生学会学術集会が杉本侃先生(大阪大学救急医学教授:当時)のもとで開催されました。以来、本学会は現在に至るまで30年の間、学会会則に記載されているように脳死の病態、および脳蘇生に関する医学の向上を図ることを目的として発展してまいりました。過去の学術集会、および本学会誌の中では多くの知見や課題が発表されてきました。本学会が重症頭蓋内疾患や全脳虚血の病態把握から治療、脳蘇生、そして欧米では学問の対象とならない脳死という病態を、医科学や倫理学などの側面から真剣な議論をしてきたことが大きな特徴と考えています。
様々な生体侵襲によって機能が低下した脳機能を回復させるためには、呼吸や循環、全身代謝の正常化を行うことは一義的ではありますが、体温管理や脳保護薬など脳に特化した治療の有用性も強調されています。一方、あらゆる治療に抵抗し、不可逆的機能不全に陥った脳死という特殊な病態は医学的に診断されますが、その後の対応は倫理的、社会的な議論をする余地も残されています。たとえば、脳死下臓器提供に関連する諸問題に関しては、本学会の主たる会員である救急医療施設や脳神経外科施設に係るスタッフの皆さんで共有する課題も存在します。
このように医学的、倫理的、そして社会的な側面を有する脳蘇生や脳死というテーマを多様な側面から議論をし、その結果を共有する機会を提供し、それらを社会に発信することが本学会の大きな役割と認識しています。本学会は医師を中心とした会員で構成されていますが、今後は上記のような趣旨にご理解をいただく医学研究者に積極的に参加していただきたいと願っております。
役員一覧
代表理事 |
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黒田 泰弘 | 香川大学医学部救急災害医学 |
監 事 |
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木下 浩作 | 日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 |
永山 正雄 | 国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科学、予防医学 |
理 事 |
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会田 薫子 | 東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣死生学・応用倫理講座 |
渥美 生弘 | 浜松医科大学 救急災害科学講座 |
荒木 尚 | 埼玉県立小児医療センター小児救命救急センター外傷診療科 |
岩瀬 正顕 | 関西医科大学総合医療センター脳神経外科 |
小野 元 | 聖マリアンナ医科大学脳神経外科 |
木下 浩作 (監事兼務) |
日本大学医学部救急医学系救急集中治療医学分野 |
小畑 仁司 | 多根総合病院 救急・集中治療/脳神経外科 |
坂本 哲也 | 公立昭和病院 |
永山 正雄 (監事兼務) |
国際医療福祉大学成田病院 脳神経内科学、予防医学 |
名取 良弘 | 株式会社麻生 飯塚病院脳神経外科 |
守谷 俊 | 自治医科大学大学院医学研究科救急医学分野 |
横堀 將司 | 日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 |
若杉 雅浩 | 富山県立中央病院 救命救急センター |
名誉会員 |
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有賀 徹 | 独立行政法人労働者健康安全機構 |
上田 守三 | 田無病院 |
魚住 徹 | 瀬野川病院 |
大和田 隆 | 湘央生命科学技術専門学校 |
奧地 一夫 | 医療法人藤井会香芝生喜病院 |
奥寺 敬 | 富山大学附属病院先端危機管理医学講座 |
加来 信雄 | 宗像水光会総合病院 |
桂田 菊嗣 | 大阪急性期・総合医療センター |
加藤 庸子 | 藤田医科大学ばんたね病院脳神経外科 |
神野 哲夫 | ジャパン藤脳クリニック |
北原 孝雄 | みどり野リハビリテーション病院 |
木下 順弘 | 社会医療法人緑風会緑風会病院 |
栗栖 薫 | (独)労働者健康安全機構中国労災病院 |
小濱 啓次 | 青山病院 |
坂部 武史 | 山口労災病院 |
塩貝 敏之 | 仁誠会奈良リハビリテーション病院 |
島崎 修次 | 国士舘大学大学院 |
杉本 壽 | 星ヶ丘医療センター |
杉本 侃 | 緑風会病院 |
鈴木 忠 | |
堤 晴彦 | 埼玉医科大学総合医療センター |
三木 保 | 東京医科大学医療の質・安全管理学分野 |
行岡 哲男 | 一般社団法人Medical Excellence JAPAN |
横田 裕行 | 日本体育大学大学院保健医療学研究科 |